FC2ブログ

音楽レッスン帳

クラシックピアノ・ジャズピアノ・エレキギター・作曲・DTM・オーケストラ・パーカッションのレッスン日記 ♪ 姉妹サイト「ニョキリサ」もよろしくお願いします(๑˃̵ᴗ˂̵)

ペレアスとメリザンド

ドビュッシーとシェーンベルクの《ペレアスとメリザンド》

 《ペレアスとメリザンド》は、ベルギーの象徴派の詩人兼劇作家であるモーリス・メーテルランクが書いた戯曲。フランス語で書かれ、1892年にブリュッセルで出版された後、翌1893年にパリで初演された。

クロード・ドビュッシー(1862-1918)
オペラ《ペレアスとメリザンド》(1902)




【時代区分】
① 初期:~1890年
② 中期:1890年~1912年
 教会旋法、平行和音(調的機能でなく音色としての和音)、5音音階、全音音階、色彩としての不協和音による印象主義的効果が特徴的。オペラ《ペレアスとメリザンド》はこの時期の代表作である。
③ 後期:1912年~
 古典主義的傾向とさらに明確な旋律線が特徴的。


【作品の特徴】
 メーテルランクの戯曲をドビュッシー自身が改訂して台本を作り、表情のこもった朗誦の自由で流動的な旋律が、神秘的で象徴的な要素を増し、幻想的でありながら生々しい人間の葛藤を描いている。

① 動機
 登場人物や事物に対応させて一定の動機が十数個、暗示的に使われている(ヴァーグナーにおけるライトモティーフの用法とは著しく異なる)。
② 声楽パート
 旋律法はムソルグスキーの影響を受け、伝統的なアリアとレチタティーヴォが融合されている。つまりフランス語の自然のアクセントやソノリティーの変化がそのままピッチとリズムの変化に置き換えられているため、歌うというより語るような旋律となっている。このように、合唱や重唱さえもない朗唱風の歌唱で全曲を統一するという独自の表現法により、伝統的な意味での旋律的要素は目立たなくなっている。しかしこのようなドビュッシーの旋律法は、その後のシェーンベルクの「シュプレッヒ・シュティンメ」や、ヤナーチェクやバルトークの旋律法「パルランド様式」にも大きな影響を与えている。
③ オーケストラ
 微妙なニュアンスの表現に終始するといった全く抑制されたオーケストレーションに留めている。完成まで約10年を費やしたこの作品は、ドビュッシーが残した唯一のオペラであるとともに、彼が作曲を通じて独自の劇音楽の様式を確立したという点できわめて重要な位置にあり、その後の音楽史に多大な影響を与え、20世紀オペラの数少ない傑作の一つに数えられている。


【印象主義】
 印象主義は1874年にモネ、ルノアールらが催した展覧会に対してアカデミズム派が嫌味としてモネの絵画《印象・昇る太陽》から引用した言葉である。印象派の画家たちは戸外、自然の中での制作を好み、物体の固有色を尊重するのではなく、反射した光線の残像を描くことから、溢れる光に対象の輪郭や遠近感をも消え去ることになる。したがって絵画における印象主義は、光と影の戯れ、線画に代わる色価、気分と雰囲気の「印象」を重視する。以上のような印象派絵画と共通するドビュッシーの音楽とはというと、頻出する三連符や五連符で流れる旋律は音楽の輪郭をぼやかし、全音音階、五音音階、旋法の音感、九や十一の和音の並置は調性をあいまいにする。そして機能を外された和音は色彩感が漂う感覚的なものである。また彼の曲の標題は、雲、霧、風、海、波、雨、水、魚、月光など自然から借りた、不定形の流動体と関係あるものがきわめて多い。したがってドビュッシーは1887年に、彼の情緒的な音楽による色彩が、明確な輪郭をもたない「あいまいな印象主義」として非難される。ドビュッシー自身は自分のことを、印象主義者というよりもむしろ象徴主義者だと感じ、ボードレール、ヴェルレーヌ、マラルメと同様に、合理的な自然主義に対する非合理的なもの、あるいは雰囲気的なもの、幻想的なものを重視した。彼の音楽は、ドイツ後期ロマン派の重く暗い半音階の複雑さとは正反対の、明るく透明な色彩を特徴とする。


【印象主義の技法上の特徴】
① 形式
 曲の性格に密着した有機的な形式がとられ非常に多様である。開始と終止の伝統的な明確さは多くの場合すてられるが、小規模な部分のシンメトリーや二部形式、三部形式はしばしば用いられる。しかし調性音楽の時代に完成されたソナタ形式やフーガは用いられない。
② 旋律
 古典派、ロマン派に比べ非常に断片的である。ドビュッシーは、《ペレアスとメリザンド》で「魂と生命の動き」を翻訳しようとしたという。そこで、長調と短調による明確な楽節構造といった一定の長さをもった旋律は意識的に避けられている。
③ 音組織
 ドビュッシーが若い頃にロシアや東洋の音楽に接した体験から、エキゾティシズムの一つのあらわれという面が非常に強い、非ヨーロッパ的音組織からの影響が濃厚である。一般に彼の作品では一部の例外を除いて、以下の種々の音組織が混用されている。

a)  スラヴ音楽の大きな特徴であり中世の教会調にも通じる、互いに三度の平行関係にある長調と自然短音階の混合使用(混合調ともいう)。
b)  東洋世界への関心に由来する、五音音階または四音、三音から成る旋法。
c)  全音音階とそれから導かれる種々の和音の非機能的な平行使用。これは同一音色の持続という、瞬間の印象の固定を可能にする。
d)  半音階の自由な使用。和音は九の和音、十一の和音など、 半音階を含む不協和音の形をとり解決を必要としない。従って一種の無調的な傾向、時として騒音的傾向をとるに至るが、音の選別配分の配慮はきわめてデリケートである。
④ リズムについて
 ドビュッシーの音楽のリズムは、五連符などの不規則分割やポリリズムが用いられ、急速なアルペッジョ、シンコペーションなどが多く、大きい時価と細分された時価との突然の交替がしばしばみられ、テンポは至るところで変化する。一定の拍子の持続はみられず、従って拍節性は弱められ、様々な不規則で自由なリズム型があらわれ、音楽の細部にまでわたる流動するリズムには生命にみちた躍動感がみられる。



ドビュッシー:オペラ『ペレアスとメリザンド』

ペレアス:カミーユ・モラーヌ
メリザンド:エレナ・スポーレンベルク
指揮:エルネスト・アンセルメ
演奏:スイス・ロマンド管弦楽団









アルノルト・シェーンベルク(1874-1951)
交響詩《ペレアスとメリザンド》(1903)




【時代区分】
① 調性時代:1899年~1907年
 ヴァーグナーやブラームスといった後期ロマン派様式を継承。交響詩《ペレアスとメリザンド》はこの時代に作曲された。
② 無調時代:1908年~1921年
③ 12音時代:1921年~1951年


【作品の特徴】
 交響詩《ペレアスとメリザンド》は、シェーンベルク唯一の交響詩である。ドビュッシーのオペラと同様に、メーテルランクの戯曲《ペレアスとメリザンド》に基づく。

第一部:ソナタの第一楽章の反復付きの呈示部
 森の中での導入部で、バス・クラリネットによる長7度跳躍し長3度下降する短いモティーフは、曲全体で重要な役割を果たす運命のモティーフである。続いてオーボエからメリザンドモティーフが、ホルンからゴローモティーフが現れる。主部は、主要主題(ゴロー)、副主題(ペレアス)、終結主題(メリザンドの愛の芽生え)により描かれる。

第二部:スケルツォと緩徐楽章に相当する
 庭園の泉のほとりの場面と城の塔の場面、ついで地下の穴倉の場面。ここでは2本のトロンボーンのグリッサンドが用いられている。

第三部:ソナタ形式の展開部に相当する
 ペレアスとメリザンドの別れと愛の、甘美なトリスタン風の場面とゴローの襲撃の場面。

第四部:呈示部と緩徐楽章部の主題が再現される再現部に相当する
 メリザンドの臨終の部屋の場面。続いてエピローグは、主要主題、第二部と第三部からとった声部の展開、エピローグ開始部分の繰り返しの三部からなる。 

 シェーンベルクは、初期には後期ロマン派的な著しく半音階的で対位法的な音楽を書いている。《ペレアスとメリザンド》では、次のような様々な試みがなされている。

① 三人の主要人物はライトモティーフ風の主題により曲首に呈示し全曲に発展させる手法。
② 対位法的な無調的パッセージ。
③ 四度を積み重ねた不協和な四度和音を積極的に使用。不協和音は協和音に解決されるべきものという常識を破って、「不協和音の解放」を行う。またシェーンベルクは、ドビュッシーらによる全音音階や四度和声を使用した音楽を知らずに、 この音階や和声を独自に発見したという。彼は《ペレアスとメリザンド》の中で、この全音音階から派生する音階、 さらに、全く新しい概念に基づく和声である四度音程を積み重ねた和音(「完全四度和音」)を初めて使用した。
④ 多楽章的内容を単一楽章に収めるような形式。全体はソナタ形式によるが、展開部にスケルツォと緩徐楽章に当たる部分が挿入された形。この時代に書かれた彼の作品には、19世紀後期にみられる進歩主義的思想や進化論の影響が感じられるが、こうして和声やポリフォニーが複雑なものに発展していくことによって、調性は顕著に弱められていく。やがて「自由な無調」の時代に入るが、彼の最も優れた弟子ウェーベルンとベルクも歩みを共にした。彼らを無調へ進ませたもう一つの大きな要因は表現主義であった。


【表現主義】
  20世紀初頭、印象主義に対する反動として絵画を中心に起こった芸術運動の概念を音楽にも転用したもの。シェーンベルクを中心とする表現主義音楽の精神的根底には、内部から外へと独自の感情世界の主観的な表出を特徴とし、その結果、非常に個性的であると同時に、時として神秘性にも達する傾向である。特にこの時代には、第一次世界大戦の暗い予感や深層心理学的な近代的自我の不安、危機に対する鋭い意識が、従来にない尖鋭で強烈な表現と、既成の美学の破壊につながる革命的な技法を追及するに至った。表現主義の主題の多くは、生への矛盾と不安、恐怖、孤独、悲惨、病、死、といったものである。


【表現主義の技法上の特徴】
① 増4度、長7度、短9度など鋭い音程進行。
② 旋律線の方向を突然かえるなどの鋭角的な予想外の進行。
③ フレーズの断片化。
④ 極端な高音域と低音域、また両音域間をまたぐ大きな跳躍と突然の変化。
⑤ 極度の弱奏や強奏が延々と継起、またはそれらの相互間の予期しない交替。
⑥ 四度和音を含む不協和音の頻出と非機能的な並置、特殊奏法による鋭い音色の使用。
⑦ ホモフォニクな部分とポリフォニックな部分の突然の交替。
⑧ 拍節にしばられない自由なリズム、時に突然細分化されて衝動的なモチィーフを形成。
⑨ 音色という要素を、旋律における音高のように細かく変化させていく音色旋律の試み。
⑩ シュプレッヒ・シュティンメの使用。
⑪ 調性によって支えられるソナタ形式のように大きな器楽形式を構成するのが困難であることから、短い警句的器楽小品か、あるいは歌曲やドラマなどテキストを支えとする声楽作品が多い。









総 括
 印象主義と表現主義は言葉の上で対語をなしているが、内容的にも両者はあきらかに対立する芸術思潮であり、また後者が前者の反動として起こったと考えられる。

印象主義
  芸術家の個性を通しての自然の客観的観察。
  ラテン的・南欧的な芸術(絵画・音楽)。
  感覚的なもの。
  芸術家の感情表現に役立つ多様な要素を装飾的に配列。

表現主義
  対象を拒絶し芸術家の内部から外へと創造。
  ゲルマンまたはスラヴの中・北欧の芸術(絵画・文学・音楽)。
  独自の感情世界の主観的な表現。
  極限まで高められた情緒、極度の内的興奮の状態において、悲劇的、予言的、神秘的なもの等々を探究。




参考CD・参考文献

『DEBUSSY:《PELLÉAS ET MÉLISANDE》』
Chor des Bayerischen Rundfunks
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
RAFAEL KUBELIK
18./19. November 1971
Herkulessaal
ORFEO:C 367 942 Ⅰ
『《ペレアスとメリザンド》のための音楽』
・ドビュッシー/マリウス・コンスタン編:《ペレアスとメリザンド》交響曲
・シベリウス:組曲《ペレアスとメリザンド》作品46
・シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》作品5
・フォーレ:組曲《ペレアスとメリザンド》作品80
セルジュ・ボド指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1989年4月11~15日/1989年4月14日
プラハ、ルドルフィヌム(芸術家の家)
SUPRAPHON:COCO-70893→4

著者:ポール・グリフィス/訳者:石田一志『現代音楽小史 ドビュッシーからブーレーズまで』(音楽之友社 1984年)
編集者:高橋浩子・中村孝義・本岡浩子・網干 毅『西洋音楽の歴史』(東京書籍 1996年)
著者:柴田南雄『西洋音楽史 印象派以後』(音楽之友社 1967年)
著書:オリヴィエ・アラン/訳者:永冨正之・二宮正之『和声の歴史』(白水社 文庫クセジュ 1969年)
編集兼発行者:淺香 淳『新音楽辞典 楽語』(音楽之友社 1977年)
日本語版監修:角倉一朗『U.ミヒェルス編 図解音楽事典』(白水社 1989年)









(2008年執筆)














[タグ未指定]
[ 2010/11/22 00:18 ] 音楽史 | TB(1) | CM(0)

没後120年 ゴッホ展

 ひさしぶりの更新です。




 先日、東京・六本木の国立新美術館で開催されている 「ゴッホ展」へ行きました。私が小学生の頃、初めてゴッホの絵を観て、特に『タンギー爺さん』に衝撃を受けたのをよく覚えています。背後の浮世絵に日本人として親しみや誇りを感じると同時に、何故だかわからないのですが、子供心に不安と恐怖を非常に感じました。しかしそれ以来、恐れながらもゴッホの絵が大好きになりました。今回の展覧会で初めて観た 『あおむけの蟹』 や、『アルルの寝室』 の実物大の再現模型が特に興味深かったです。





ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集『和声と創意への試み』作品8 から
協奏曲第2番ト短調 「夏」

第1楽章 Allegro non molto  
第2楽章 Adagio e piano - Presto e forte  
第3楽章 Presto










[タグ未指定]
[ 2010/11/11 19:50 ] 美術 | TB(0) | CM(0)
全記事表示リンク
月別アーカイブ